QOL 生活の質
QOL(quality of life)という言葉が日本で一般的に知られるようになったのはいつ頃だっただろうか。
同時にインフォームドコンセントやターミナルケアという言葉も知られるようになったと記憶している。(違うかな?)
それらの言葉は癌患者や高齢者、また障害を持った人々によく使われていたように思う。
乾癬という病いは、見た目に分かる皮膚病だけに、患者のQOLを著しく低下させる。
だが、私はその苦しみを口にする事は出来なかった。
実際、乾癬という皮膚病は珍しく、皮膚科に通っていても同じ患者に出会うこともなかった。
見た目が悪く珍しい皮膚病だけに、この皮膚を見たら他人は気持ち悪いと思うだろう。もしかしたら移るのではないかと不安に思う人もいるだろう。その気持ちはわかる。
だから隠そう。隠せるだけ隠そう。
誰かにこの苦しい気持ちを分かってもらいたいなどと思う事自体が、図々しい事だ。
医者は病を診る専門家だ。
患者の気持ちまで、考えてはいられない。例えば癌患者に対して、医者は癌を取り除こう、癌を消そうと努力する。
だがその治療により、患者の生活の質は著しく低下する。
癌を取り除く為に、他の犠牲は仕方がないと考えるのが一般的な時代だった。そういう時代だったのだ。
だが今は、難治性の病いである乾癬に対してもQOLという言葉が使われる時代になった。
治り難いからこそ、出来るだけ良い状態を保ちながら病いと共存していこうという考え方が主流となっている。
その為には、周りに理解してもらうことも重要な問題となる。
周りに理解してもらうということ、苦しいと言うこと自体、私はずっと悪い事のように思っていた。 病を抱えながらも人間らしい生活を送りたいと願う事は、実は決して贅沢でもなく、悪いことでもないのだ。
治療にQOLという言葉が出てきたことで、患者は我慢するのが当たり前と思い込んで生きてきた自分に、私は初めて気がついたのだ。