タイミング
生物学的製剤の投与は乾癬を治す治療法ではない。症状を改善し、患者のQOLを保つ為の治療法だ。
だから治療をやめると、乾癬はまた出てきてしまう。つまり良い状態を保つには、ずっとこの治療を続けなければならないという事になる。
生物学的製剤は高額だ。高額治療費制度を利用しても、驚くほどの額になる。
私はタイミングというものについて考えていた。
私は独身だ。そしてもう子供を望める年齢でもなくなった。今は会社で少し責任を持たなければならないポジションにいて、生物学的製剤を少しは続けて使える収入がある。
今しかない、と思った。
もし家族がいたら、高額治療費なんて払えないだろう。もし子供を産める年齢だったらこの治療法は躊躇していただろう。もし非正規で仕事をしていたら収入が不安定でこの治療法は選択肢から外れていただろう。
などと私はあれこれと考えていた。でも単に、自分が生物学的製剤を使う事を肯定したかったのかもしれない。
自分で望んだ治療法であるにもかかわらず、実は怖かったのだ。
一生この治療を続けていけるとは思っていない。副作用が将来どう出るか分からない。ましてや、自分に生物学的製剤が効くかどうかの保証もない。
私は後悔しないだろうか?
そういえば、、と私は思い直した。人生なんてもともと予測不可能なものじゃないか。計画しても計画通りに進む事などほとんどない。旅だってそうだったじゃないか。あれこれ考えたところで、不安材料を増やすだけじゃないか。
私は腹を括った。