乾癬という病い

このブログは、難治性皮膚疾患である乾癬という病いとともに生きる、一人の人間の記録です。

ケブネル現象とトレムフィア

先月会社で書類を整理していた時、段ボールの端で腕を少し切ってしまった。傷がかさぶたになった後、そこが乾癬の皮疹に変わってしまった。

乾癬患者の皮膚にとって外的刺激はなるべく避けなければならない。外的刺激により、その刺激を受けた部分が乾癬の皮疹に変わってしまうことをケブネル現象と言うのだが、小さな頃から私はその現象を経験的に知っていた。子供は外で遊んでいるとよく怪我をするし、虫に刺されたりする。その傷跡が乾癬に変わることはよくある事だった。

この現象にちゃんと名前があるということを知ったのは私が10代後半くらいの頃だった。

医者から教えられた訳ではなく、自分で乾癬を調べる中で出てきた言葉だった。まだインターネットも一般的ではなかった時代で私は何かの本でその言葉を知った。

ケブネル現象という言葉を知った時、私はかなり驚き、そしてものすごく安心したのを覚えている。

当時乾癬は本当に珍しい病だった。医者にもあまり知識はなかったし、「乾癬」という病名をこちらから告げると大抵の医者は表情を曇らせた。

「申し訳ないがうちでは治せない」と何人の皮膚科医に言われたかわからない。

そんな珍しい病のはずなのに、私によく起こっていた現象(傷跡が乾癬になる)にちゃんと名前があったのだ。

つまりそれは私だけに起きている現象ではないということ、そして世の中ではちゃんと乾癬や他の皮膚の病が研究されているんだという思いが、少しだけ私の孤独を和らげた。

過去に私は虫垂炎の手術をしているのだがその傷跡もしっかりと乾癬に変わっている。

だが生物学的製剤を打ち始めてからは、傷跡の皮疹も消え、怪我をしてもケブネル現象さえ起きなくなっていた。

それが先日出来た段ボールの傷でケブネル現象が起きてしまった。最近は体の皮疹も増えその厚みも増し、そして耳の中の乾癬も復活してきた。

逃げても逃げてもひたひたと乾癬は追ってくる。

でもこれは自分の体で起きていることだ。生きてる限り逃げられる筈もない。逃げるより戦うより、共存を選んだ方がもしかしたらずっとラクなのかもしれない。

でも生物学的製剤の効果を知ってしまった今、私はもう二度とあの肌には戻りたくはない。

この想いは贅沢なんだろうか。いや、この想いで苦しむ時が来るのは最初から覚悟していた筈じゃないかと何度も自問自答する。

今月は9回目のトレムフィアを予定している。でも私にとってトレムフィアはもうそろそろ限界なんだと認めざるを得なくなった。

 

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