乾癬という病い

このブログは、難治性皮膚疾患である乾癬という病いとともに生きる、一人の人間の記録です。

生物学的製剤の延期

病院の予約日。私は仕事を急いで片付け、時間休を取って午後から病院へ向かった。予約の時間より15分も早く順番が表示されて、慌てて診察室に入った。

医師は「どうですか?乾癬の状態は」とまず聞いてきた。私は、悪化している状況を細かく説明した。

肘はもう生物を打つ前の状態みたいに皮疹で覆われてガサガサだし、肩、首まわり、頭皮、お腹などにもたくさん出てきた。大きな皮疹ではないが小さい皮疹が体に多発している感じだ。半袖の服は今の状態ではとても着れない。

「あの、コロナの件なんですが」と私は切り出した。

医師は答えた。「あぁはい、コロナですね。これは従来のインフルエンザと同じようなものと捉えて下さい」

テレビでよく聞く言葉だ。インフルと同じといってもこの病院の医師や関係者にコロナ感染者が出れば一定期間外来を閉める事になるだろうに、本当に同じと捉えていいのだろうか。

「生物学的製剤を使っている人はコロナにかかると重症化する可能性があるんですよね?」と聞くと、医師は「そうですね、それはインフルエンザでも同じです。免疫を抑制してるわけですから感染症にかかると重症化の可能性はあります。でもコロナに罹ったからといって皆が死んでしまう、というようなそんな病気ではないです」と答えた。

私はもやもやしながらも更に質問した。

「今回のコロナは感染しても症状が出ない人がいると聞きます。もし私が感染していたとして何も症状がないまま生物学的製剤を打ってしまったらどうなりますか」

医師は「その場合、生物を打ったことをきっかけにコロナの症状が出て悪化する可能性は考えられます」と答えた。

こういう質問を幾つかやり取りしたのだが、医師の答えの中に、安心できるような材料を私は見つけることができなかった。

これは困ったな…と思って私が一瞬黙り、視線を床に落とした瞬間、医師がはっきりと言った。

「やめましょう。今回の生物は延期しましょう」

私が「えっ」と驚いて視線を上げると「今回はトレムフィアをやめて別の生物に変えるタイミングでした。もし別の生物を既に打っていて立ち上がりをみている段階だったら私も延期は提案しなかった。ただあなたの場合はちょうど生物の切り替えのタイミングだったという事と関節に症状が出ていないこと、あと何より今、生物を打ってコロナで何かあったら、あなたはきっと後悔するでしょう?あの時打たなければ良かった、と」

私は言葉がすぐには出てこず黙っていると、

「だからやめましょう」と医師はまたはっきりと言った。

私は少しホッとしていた。自分が迷って決めるのではなく医師がはっきり決めてくれたことに。

「ただし、乾癬は悪化すると思います。取り敢えず、一ヶ月生物を延期して、その頃には世の中が落ち着いているかもしれない。もし落ち着いていなかったらまたその時考えましょう」と医師は言った。

少し考えて、確かにそれが今の私にとっては最善の策だと思えたし、納得ができた。

経済的にはなんとか生物を打てる環境に今ありながらも、コロナによって打てなくなってしまったこの予想外の状況に、かなり複雑な気持ちを抱えながらも、しばらくはステロイド軟膏での治療になった。

どうか一日も早く世界の混乱がおさまりますように。

一日も早くみんなが今までの日常を取り戻せますように。

 

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