生きること
会社の新年会がホテルで行われる為、私はパーティー用のワンピースを買った。乾癬を気にすることなく、ただ自分が着たいデザインのワンピースを選んだ。好きな服を選べるということ。それは今までにない経験だ。
私にはおよそ物欲というものがない。それは多分、今まで自分を着飾ったり、綺麗にみられたいと思うことに無縁だったからだ。洋服と同じくアクセサリーなどもつけられる肌ではなかった。何より自分に視線を向けられたくなかった。
私にとって着るものや化粧は自分を綺麗にするものではなく、いかに乾癬を隠せるものであるかだった。
結果、「モノ」に対しての欲や執着のない自分が出来上がった。「モノ」にあまり価値を見出せないのだ。世間の流行にもひどく疎い。
私は多分、幼い頃から他の人より自分の内面と向き合う時間が多かった。
何か嫌な事があった時、気を紛らわそうにも外に向かって他人と一緒に紛らわせる事が出来なかった。
他人と一緒にいると、どうしても肌を気にして体も心も緊張してしまうからだ。
私は変化のない日常を望んでいた。今もそうだ。
心の中に波風立てる事なく、穏やかに過ごせる日常。
ふと考える。
それって乾癬じゃなかったとしても無理じゃない?
生きていると誰だって予想していなかった事が次々と起こる。
望んでいた事も望んでいなかった事も、自分でどうにかできる事も、自分ではどうにもならない事も。
何が起きても動じない強い心など有りはしない。
必要なのはそれらをなんとか乗り切るための、経験から得た知恵と知識だ。