乾癬という病い

このブログは、難治性皮膚疾患である乾癬という病いとともに生きる、一人の人間の記録です。

花火大会

今夏は半袖Tシャツを何枚か買った。

今まではTシャツを着るというごく何気ない普通の事が出来なかった。乾癬で腕を出せないからだ。今は着れる。すごい事だ。

そうだ、と思い立ち、私は家にあるホワイトジーンズを裁ちバサミで膝丈まで切ってみた。切った裾を少し折り返して履いてみると、うん、いい感じ。Tシャツにハーフパンツ、全然暑苦しくないしとても夏らしい。

今年の花火大会はこの格好で行こうと決めた。

いつも友人が良い観覧席を用意してくれて、大人数で隅田川の花火を楽しんでいる。

でも私は毎年不安の方が先に立っていた。暑さに耐えられるだろうかと。

日が沈まないうちからみんなで集まり、花火が始まるまで炎天下で飲み始める。長袖長ズボンだと暑さに耐えられなくなる。

だからなんとか五分袖くらいのTシャツを着れないかと何日も前から腕に強いステロイドを丁寧に塗って準備を始める。皮疹は綺麗になるだろうか。五分袖を着れるだろうか。それが心理的にかなりプレッシャーになる。

だから私はいつも花火を心から楽しめなかった。

暑さにのぼせながら乾癬にうんざりしながら夏のイベントをなんとかやり過ごしていた。

今年花火当日、外気はとても暑く湿っていた。気温は30度を超えている。いつもならそれだけでもう気分が悪くなる気候。

でも今年は乾癬を気にする心配や不安がない。それだけで感じる暑さまでが全然違う。もちろん暑いのだが心の苦しさが全くない。

暑いんだから肌を出す。腕も足も。みんながそうしているように。それが当たり前かのように。

クリアな肌で外気に触れる。自然な形で外と自分の皮膚が繋がる。暑さも湿度も直接肌で感じる。暑さすら楽しめる。間近で聞く花火のドーンという爆音を体中に浴びながら、あぁ夏が来たんだなと実感した。

帰り道、嬉しさを噛み締めながら歩いた。ずっとこうやって夏を楽しむのが夢だった。 それが自分にも出来た。 夜風に当たりながらその心地よさも嬉しくて、胸がいっぱいになって思わず涙が出た。

健康な体で生きるって多分すごいことだ。 それだけで生きる素晴らしさを感じられる機会がたくさんある。

いずれ人間は歳をとり病を負い体が動かなくなって死んでいく。

でもそれまで最低限働けるだけの体と心さえあれば、楽しむチャンスはいくらだってあるんだ。

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