乾癬という病い

このブログは、難治性皮膚疾患である乾癬という病いとともに生きる、一人の人間の記録です。

スキリージ

生物を打ってもらえなかった6月、肘全体を覆うように乾癬の皮疹は広がり始めた。

どうやって隠そうか、どうやったら暑さを凌げるのか、そんな事ばかり考えるようになった。

7分袖のカーディガンを会社に着て行っても時々動きによって肘が出てしまう。とたんに身体が緊張し、肩に力が入り、乾癬を隠すことに気を取られ、また頭痛も頻繁に起きるようになった。

久しぶりに感じる「不自由」だ。

5歳で乾癬を発症しずっと皮疹だらけの肌で生きてきたが、生物によってここ2年近くクリアな肌を経験してしまった私にとってこの不自由さを再度受け入れることは難しかった。

会社で棚の上の方にある書類を取ろうと手を伸ばす。袖がめくれて皮疹があらわになる。

同僚の視線が私から私の腕に移る。

私は、見られた、と思い、相手もなんとなく見なかった振りをする。

皮疹から鱗屑がヒラヒラ落ちてしまった時もそうだ。私は焦り、それを見た同僚もまた、そのことに触れてはいけないんだろうと察して見なかった振りをする。

こういう無言のやり取りに、数え切れないほど心を潰されてきた。相手に気を遣わせる事ももう耐えられない。

乾癬である事を相手に言えばいいのかというとそんな簡単な問題でもない。言ったことで後悔したり更に傷つくことだってある。

7月になり診察日を迎え、私は少し緊張しながら病院へ向かった。また医師に「あなたは不安そうに見える」と言われたらどうしようか。

病院の入り口で検温を済ませ、受付をし、順番が来るのを待った。

順番がきて診察室に入り医師の前に座るとすぐに、「どうですか?前回はかなり不安そうでしたが」と聞かれた。

私は「いえ、前回もそうでしたが不安はないですよ」と努めて冷静に答えたが、

「そうですかね?前回は不安で泣きそうになってましたよ」と言われた。

そう言ってくる医師に対して少し思う事はあったが、敢えて笑いながら「えーそうですか?全然大丈夫ですよ」と返した。

医師は「そうですか。じゃあもう後悔はしないって事で…」と言いながら、新しい生物学的製剤のスキリージを箱から出して、注射する準備を始めた。

なぜこの医師はまたもやこんな言い方をするのだろう?もはや医師と患者の信頼関係なんて成立してない言葉だ。インフォームドコンセントのかけらも無い。

本当は医師に聞きたい事は色々あった。でも面倒な患者と思われたくないという思いと、今回は絶対に生物を打ってもらいたかったので私は何も言わずに注射して貰うのを待っていた。

本来医師と患者ははそんな関係でいいはずがない。でももう不毛なやりとりをすることが嫌だった。

医師はスキリージを私のお腹、おへそを挟んで両側に1本ずつ打った。

初めての生物なのでなにか具合が悪くなるようだったら連絡してくださいと言われ、私はお礼を言って診察室を出た。

生物を無事打ってもらえたが、なんだか気が晴れなかった。

仕事は半休を取っていたのでそのまま帰宅し、シャワーを浴びた後、なんだか疲れてしまったのでうたた寝をした。目が覚めて体を起こすと、なぜだかひどく身体が怠かった。加えて動悸も始まった。この動悸は丸々1日続いたが、1日で止まった。

スキリージの副作用の中にそれらの症状が当てはまってたので、4週間後の注射の際にはその事も伝えないととメモをした。

7月最後の週にまたスキリージを打ちに行く。今年の夏は半袖は無理なんだろうなぁと思うと、今の世の中の状況も相まって、気持ちだけが落ちて行った。

 

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