沖縄旅行
遅い夏休みをとって私は沖縄に行くことにした。今打っているバイオ製剤のトレムフィアがあまりスキッと効いてくれず新しい皮疹が出てきている。少し焦っていた。
来年もクリアな肌でいられる保証なんてない。だから今のうちにやりたい事をやっておきたい。夏が終わってしまうのが嫌で、まるで悪あがきするように私は沖縄旅行を決めた。
今回目指したのは沖縄本島ではなく、離島。青い空と海。そして白い砂浜。こういう場所が似合わない私でも今のクリアな肌なら夏を思い切り楽しめると思った。
が、実際に行ってみると予想以上に沖縄の日差しはめっちゃくちゃ強かった。「絶対焼かない」というフレコミの日焼け止めを塗り、更にラッシュガードを羽織って守らないと、ひ弱な私の肌はとんでもない事になりそうだった。
石垣島のホテルに着くとそそくさと日焼け対策をし、すぐに海へ遊びに出た。
白い砂浜を走って渡りエメラルドグリーンの海になんのためらいもなく飛び込んだ。いい歳なのにまるで子供のように友人ときゃあきゃあと声を上げながら泳いだ(意外にうまく泳げた)。
島にいる間、楽しくて私は乾癬患者である事を忘れていた。
西表島に沈む夕日を眺め、沖縄民謡をライブで聴きながらオリオンビールと郷土料理に舌鼓み。シュノーケルでウミガメと共に泳ぎ、竹富島では牛車に揺られた。赤瓦の屋根を見ながら沖縄らしい景色の中で島時間を過ごした。
沖縄で食べたかったものは全部食べた。
やりたかった事も全部やった。
あぁもう悔いはないなと思った。またあの醜い肌に戻ったとしてももういいやとすら思った。夢のような時間を過ごせたことにただただ感謝した。
帰りの飛行機が無事に羽田に到着し、電車で自宅の最寄駅に降りると外はキンモクセイの香りがしていた。不在にしていたたった数日の間に、東京はすっかり秋になっていた。