初診
初診の日。
仕事は午前休を取り、病院へ向かった。
ちゃんと予約時間に名前を呼ばれ、私は診察室に入った。
若い男性の皮膚科医だった。
私は今までの治療歴や身体の症状、そして今の自分の想いをきちんと説明した。
その上で生物学的製剤を使いたいと申し出た。
医師は淡々とそれを聞き、その後、ひとつ質問をしてきた。
妊娠の予定はないですよね?
私は、はい、ありません、と答えた。
医師は、ではちょっと待って下さい、部長に確認を取ってきます、と席を立った。
すると、よく雑誌やネットで見ていた有名な医師がひょこっと顔を出した。
人懐こい笑顔のその医師は、私の体を診てすぐに、「生物学的製剤で人生変わるよ!」と言った。
その言葉で私はなぜか泣いていた。理由はわからない。その時の気持ちを言葉で言い表すことはできない。自分にとって初めての感情だったからだ。
すぐに私は生物学的製剤を使えるかどうか身体の状態を見るため、幾つかの検査を受けた。
血液検査、尿検査、レントゲン、CT。
10日後、結果に問題なければ生物学的製剤を打つことになった。
あっという間の展開だった。
あんなに望んでいたのに、気持ちがついていっていなかった。
生物学的製剤についての冊子を渡され、これを読んでおいて下さい、といわれた。病院を出て、会社へ向かう電車の中で私はずっと考えていた。
人生が変わる、という事の意味を。