足湯
ある秋の日、友人達と連れ立って少し遠出をした。
立ち寄った先にたまたま足湯があり、みんなで入ろうという事になった。
普通の人にとってはなんてこともない、よくありがちな場面だ。
膝まで服をまくり、暖かい足湯につかる。
だがそんな事も今までの私には出来ない事だった。足の甲、くるぶし周り、そして脛などは乾癬がとても出来やすい部位であり、症状も酷くなりがちなところだ。
たとえステロイド軟膏で一時的に症状を抑えていたとしても、ステロイドで薄くなった皮膚はお湯に浸かると赤くまだらになり、結局は目立ってしまう。
いつもなら何かと理由をつけて自分だけ断る場面だが、私は自分から「足湯しようよ!」と言ったのだ。
靴下を脱ぎ、履いていたジーンズを膝までまくった。もう他人が見て驚くような皮膚ではなかった。ポツポツと多少乾癬は残っていたが指摘される程でもない。
暖かい温泉にふくらはぎまで足を入れた。じんわりと身体中が暖かくなった。
私はとても嬉しかった。
他人にとっては、たわいもないこと。でも私にとっては忘れられない瞬間となった。